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@wing_tail の mtg

まったく、リミテッドは最高だぜ!!

History Maker ――ライボが望む永遠

突然ですが、「Magic: The Gathering」のカードの中で、アナタが最も好きな1枚は何ですか?


この1枚がなければ、マジックを楽しむ今の自分はいなかったかもな……。

 

誰しもの思い出の中にも、燦然と輝くカードがあることと思います。
マジックの歴史は、まさにカード1枚1枚の歴史の積み重ね。愛すべきカードたちがあればこそ、マジックは他にないほど面白い。
そう。楽しいゲームの始まりはいつだって、遠く聞こえるカードたちの呼び声なのです。

 

 

本連載では、毎回1枚のカードにスポットを当てて、その歴史を紐解いていきます。
知識だけでカードを好きになるとも限りませんが、それが彩るマジックの面白さぐらいであれば伝わるのではないでしょうか。
上達の秘訣は楽しむこと。この連載が、よりマジックを楽しむ一助になれば幸いです。

 

さて、初回に当たる本記事でご紹介するのは、この1枚。

原初にして至高の火力――《稲妻/Lightning Bolt
1993年にマジックが発売されてから存在し、バーンという概念を生み出した偉大なるカードです。
ちなみに、私が最も愛する1枚でもあります。

 

1マナで3点のダメージを与えるインスタント。実にシンプルな効果だと誰しもが思うでしょう。しかし、それに反して驚くほどの汎用性を持つカードです。
これは火力呪文の持つ特性と言えますが、相手のライフをゼロにして勝つことを目指す限り、火力は絶対に無駄なドローになることがありません。
それ1枚と、いくらかのマナを支払えば、少なくとも対戦相手のライフをゼロに近付けられる。そのうえ一般的なクリーチャーのように召喚酔いのタイムラグはなく、除去やブロッカーなどの妨害にも合わない。逆に相手のクリーチャーを対象として唱えれば、除去になり得るので妨害手段としても活用できる。プレインズウォーカーというカード・タイプが増えた現代マジックにおいては、さらにターゲットとなるカードが増え、価値はウナギ登りと言えます。
そんな汎用呪文である火力の中でも、《稲妻/Lightning Bolt》略してライボの持つパワーは別格です。
何と言っても1マナ。コンボデッキでもない限りノーランドでキープはしないでしょうから、スクリューで唱えられないことは考えられません。機をうかがってハンドに貯める場合も、他のアクションを阻害することなく唱えられるでしょう。
そのうえ3点というダメージ量が曲者です。対戦相手へ撃ち込めば7発で初期ライフが吹き飛び、クリーチャーの質が上がった現代マジックにおいても3~4マナ域のクリーチャーを安々と除去できる。何のデメリットもない1マナのカードが持つカードとしては破格の効率と言えます。
さらにはインスタントですから、コンバットトリックとしても抜群に優秀です。相手が小型クリーチャーに強化呪文を撃って大型クリーチャーを討ち取りに来たときなど、1マナで逆に強化呪文もろとも墓地へ送ってやり、その上で戦闘後メイン・フェイズに追加のクリーチャーなどを展開した日には、マジで投了する5秒前というところでしょう。
しかも現代マジックにおいては、格闘による除去という新たな的も増えたので、インスタントの軽い除去は以前にも増して価値が高まっています。格闘は解決前に種となるクリーチャーを除去されるとフィズる(立ち消えになる)ので、先程のコンバットトリック同様の大きな戦果を上げられることになります。その点を鑑みても、本当に文句の付けようがない1枚なのです。

 

そんなスーパーカードであるライボは、当然ながらトーナメントシーンでも華々しい活躍をしています。
たとえば、1994年の第1回目の世界選手権で準優勝を収めたデッキを見てみましょう。

世界選手権94 準優勝 Bertrand Lestree, ZOO
土地(20枚)
2 《Bayou》
2 《真鍮の都/City of Brass》
4 《ミシュラの工廠/Mishra’s Factory》
4 《Taiga》
4 《Tropical Island》
4 《Volcanic Island》
クリーチャー(12枚)
3 《アルゴスのピクシー/Argothian Pixies
3 《極楽鳥/Birds of Paradise》
2 《疾風のデルヴィッシュ/Whirling Dervish》
4 《密林の猿人/Kird Ape》
その他(29枚)
1 《チャネル/Channel》
1 《新たな芽吹き/Regrowth》
4 《稲妻の連鎖/Chain Lightning》
4 《稲妻/Lightning Bolt
4 《火の玉/Fireball》
1 《Demonic Tutor》
1 《精神錯乱/Mind Twist》
1 《Ancestral Recall》
2 《心霊破/Psionic Blast》
1 《Time Walk》
1 《森の知恵/Sylvan Library》
1 《支配魔法/Control Magic》
1 《Black Lotus》
1 《Chaos Orb》
1 《氷の干渉器/Icy Manipulator》
1 《Mox Ruby
1 《Mox Emerald》
1 《Mox Sapphire》
1 《Mox Jet》

さすが黎明期だけあって、ヴィンテージでしか使えないカードが大量に採用されているものの、ライボもそれに肩を並べています。
さらに、ほぼライボと同性能の亜種である《稲妻の連鎖/Chain Lightning》も採用されているのが印象的です。

如何に1マナ3点火力が強力か分かるというものでしょう。

 

基本セット2010で久しぶりにスタンダードシーンへ帰還した際も、もちろん結果を残しています。

世界選手権09 優勝 Andre Coimbra, Naya Lightsaber
土地(24枚)
4 《乾燥台地/Arid Mesa》
4 《森/Forest》
3 《山/Mountain》
1 《巨森、オラン=リーフ/Oran-Rief, the Vastwood》
4 《平地/Plains》
4 《根縛りの岩山/Rootbound Crag》
4 《陽花弁の木立ち/Sunpetal Grove》
クリーチャー(25枚)
4 《悪斬の天使/Baneslayer Angel》
4 《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf》
4 《貴族の教主/Noble Hierarch》
4 《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》
1 《硬鎧の群れ/Scute Mob》
4 《野生のナカティル/Wild Nacatl》
4 《長毛のソクター/Woolly Thoctar》
その他(11枚)
3 《復讐のアジャニ/Ajani Vengeant》
4 《稲妻/Lightning Bolt
4 《流刑への道/Path to Exile
サイドボード(15枚)
1 《復讐のアジャニ/Ajani Vengeant》
2 《噴出の稲妻/Burst Lightning》
4 《天界の粛清/Celestial Purge》
4 《ゴブリンの廃墟飛ばし/Goblin Ruinblaster》
4 《大貂皮鹿/Great Sable Stag》

現代マジックはクリーチャーの質が著しく上がっているため、94年のデッキとは構築思想からして大きく異なりますが、変わらず鎮座するライボには脱帽する他ありません。
最高の火力という呼び声が高いのも納得というものです。

 

さて、ライボはこれだけ強力なカードですので、当然のことながらスタンダードシーンで常に見られるわけではありません。
しかし、その調整版、すなわち単体火力という括りに属するカードは数多あります。最後にそれらを見ていきましょう。

直系の子孫とも言える調整版は《ショック/Shock》と《灼熱の槍/Searing Spear》です。それぞれダメージが下がったりコストが上がったりと、分かりやすくパワーが落とされています。
しかし、いずれのカードもコンストラクテッドで使われた実績のあるカードですので、決して弱い訳ではありません。特に《灼熱の槍/Searing Spear》は除去として見た時にライボと同じ射程を持ち、また1マナとは天地の差があると言えど2マナも取り回しの良いコスト帯であることから、十分なコストパフォーマンスのカードとして活躍しました。
前述の通り、3点というのは3~4マナのクリーチャーを屠るに十分なダメージ量ですので、それが2マナで与えられるとなれば性能の高さも納得しやすいと思います。下位互換に当たる《火山の鎚/Volcanic Hammer》というカードも存在しますが、なおコンストラクテッドで採用された実績があるので、2マナ3点インスタントという基本性能はやはり一線級なのです。

ちなみに、この《灼熱の槍/Searing Spear》には《火葬/Incinerate》と《稲妻のらせん/Lightning Helix》という非常に優秀な先輩がおり、基本性能そのままにプラスアルファの効果が付随しています。ここまで来ると、付随のメリットによってライボを凌ぐパフォーマンスとなる場合もあるため、デッキ次第ではライボより優先され得るレベルでしょう。

他にコストとダメージ量の両方を引き上げる調整を加えた亜種も存在します。
ライボと並び称される火力である《火炎破/Fireblast》や、赤の申し子といった印象の《炎の投げ槍/Flame Javelin》など、コストの増加からライボほどの取り回しの良さはありませんが、コンストラクテッドで目覚ましい活躍を見せたカードがいくつも刷られているのです。

特に《火炎破/Fireblast》は、「山を2つ生け贄に捧げる」という大変よろしくない代替(ピッチ)コストで唱えられる上に、スタンダードシーンでライボと共演したこともあるカードであり、山とライボ2枚ずつに火炎破のたった5枚で初期ライフの半分を吹き飛ばせました。
少し本筋から逸れますが、ピッチスペルが如何に危険なものか、よく分かるエピソードと言えるでしょう。
生け贄に捧げると言えば、追加コストとして何かしらのパーマネントの生け贄を求める形で調整したカードも刷られています。

中でも《ゴブリンの手投げ弾/Goblin Grenade》と《爆片破/Shrapnel Blast》の2枚はライボを凌駕する5点という破格のダメージを叩き出せたことから、もちろんコンストラクテッドでも大活躍しました。
戦闘後メイン・フェイズに攻撃し終えたゴブリン・クリーチャーやアーティファクト・クリーチャーを対戦相手に投げつけ、初期ライフの4分の1を消し飛ばす単純な使い方でも十分な脅威と言えますが、除去として見れば5~6マナ域まで軽く血祭りに上げられる訳で、使われる側は堪ったものじゃない効果と言えます。
しかも、マジックのカードの中には、墓地へ送られると置き土産を残すパーマネントもあるため、そのようなPIG(死亡時誘発)能力を持つクリーチャーなどを用意できれば、むしろ追加コストがメリットにすら思えてくるのです。そのシナジーまで考えながらのデッキ構築は、さぞ面白かったことでしょう。
また、これはパーマネントの生け贄を追加コストに持つインスタント全般に言えることですが、アーティファクトへ除去を差し向けられたタイミングで、それを生け贄に捧げて追加コストを帳消しにするプレイもできます。
その意味で言えば《爆片破/Shrapnel Blast》は、時にライボすら凌ぐ劇的なパフォーマンスを見せたと言えるでしょう。

ちなみにフォールン・エンパイア初出の《ゴブリンの手投げ弾/Goblin Grenade》は、同エキスパンションに3種類の異なる絵柄で収録されました。今は存在しませんが、遊び心のある面白い収録形式ですね。

 

話を戻して、追加コスト以外にデメリットを持たせて調整した単体火力というのも刷られてきました。前述の《稲妻の連鎖/Chain Lightning》はその代表とも言えますが、デメリットの大きさ故に日の目を見るまで時間が掛かったカードというのもあります。
《稲妻の連鎖/Chain Lightning》の子孫とも言える《プラズマの連鎖/Chain of Plasma》は正にそのような1枚で、初出のオンスロートがスタンダードで用いられた頃は相手の手札にある不要牌が除去になってしまう関係であまり使われませんでした。
しかし、一見した限りデメリットでしかないような効果が驚くべきメリットに変わることもあるのがマジックの面白いところ。とあるカードが刷られたことにより、世界選手権に足跡を残すこととなります。

人呼んで、スワンプラズマ。たったの2枚を揃えるだけで、ライブラリーをほぼ全て引ききれる驚きのコンボです。
《ブリン・アーゴルの白鳥/Swans of Bryn Argoll》を対象に《プラズマの連鎖/Chain of Plasma》を唱えると、解決の過程で3点のダメージが3ドローに置換され、その内の1枚を捨てて《プラズマの連鎖/Chain of Plasma》をコピーし、その対象を再び《ブリン・アーゴルの白鳥/Swans of Bryn Argoll》にすればループ開始。好きなだけカードを引いた後にコピーを止め、有り余るカードで対戦相手にトドメを刺して勝ちとなります。
一時期エクステンデッドで成立したこのコンボを軸にしたデッキは、2008年の世界選手権エクステンデッド・ラウンドを無敗で駆け抜けました。

世界選手権08 エクステンデッド6-0 Luis Scott-Vargas, Swans Plasma
土地(20枚)
1 《繁殖池/Breeding Pool》
1 《滝の断崖/Cascade Bluffs》
3 《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》
4 《汚染された三角州/Polluted Delta》
8 《冠雪の島/Snow-Covered Island》
2 《蒸気孔/Steam Vents》
1 《湿った墓/Watery Grave》
クリーチャー(8枚)
3 《猿人の指導霊/Simian Spirit Guide》
4 《ブリン・アーゴルの白鳥/Swans of Bryn Argoll》
その他(34枚)
3 《血染めの月/Blood Moon》
4 《プラズマの連鎖/Chain of Plasma》
4 《金属モックス/Chrome Mox
2 《卑下/Condescend》
1 《燃焼/Conflagrate》
2 《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》
4 《炎渦竜巻/Firespout》
2 《マナ漏出/Mana Leak》
4 《思案/Ponder》
4 《 呪文嵌め/Spell Snare》
4 《知識の渇望/Thirst for Knowledge》
サイドボード(15枚)
3 《古えの遺恨/Ancient Grudge》
1 《血染めの月/Blood Moon》
2 《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》
1 《万の眠り/Gigadrowse》
1 《交錯の混乱/Muddle the Mixture》
2 《神秘の指導/Mystical Teachings》
2 《否定の契約/Pact of Negation》
2 《霊魂放逐/Remove Soul》
1 《難問の鎮め屋/Vexing Shusher》

どんなカードにも言える訳ではないでしょうが、今はデメリット故に使われないカードも、いつの日か《プラズマの連鎖/Chain of Plasma》のように歴史を創り出すかもしれません。
こんなカードがあれば活躍しそうだなぁと想像しながら、今のカードリストを眺め直すのも一興ではないでしょうか。

 

それでは、今回はこのあたりでお開きとします。
We were born to make history.
また次回、カードたちの紡ぐ歴史を楽しみましょう。