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まったく、リミテッドは最高だぜ!!

リミテッドをはじめからていねいに――デッキ構築いろは歌の巻

前回の、リミテッドをはじめからていねいに!

limitedder.hatenablog.com

ターンが持つ6つの価値の内で、いま進行中のゲームで焦点となっているものを正しく読み取れれば、自分のアクションを擬似的な《Time Walk》に仕立てる算段も立ち、それだけ多くのターンが稼げるので勝てる。

 

ゲームの焦点は見切ったじゃん。勝ったな、ガハハ!

 


ちーさまを見習って、お気楽にプレイしたいものですね。

 

というわけで、簡単に前回のポイントを振り返っておきましょう。
マジックにおいてターンが意味するものは、ルール上で定められた以下の6つの項目に絞られます。

  1. すべてのパーマネントを1度だけアンタップする。
  2. カードを1枚だけドローする。
  3. 土地を1枚だけプレイする。
  4. 手札のカードを唱える。
  5. 起動型能力を使う。
  6. 戦闘を1度だけ行う。

しかし、実戦において進行するターンを考える場合、これら6項目の全てが戦況に影響を与えている訳ではないことに気付きます。そのシチュエーション毎に、これら6項目の内のいくつかだけが有利・不利を司る形となるため、考えるべき実質的なターンの価値は限定的なものとなるのです。
よって、《Time Walk》に類するエクストラターン獲得カードを唱えずとも、有利・不利を司る項目に大きな影響があるカードさえ唱えられれば、擬似的に《Time Walk》したような状態を作れると言えます。
お互いにマナ・ソースは潤沢だけれど、戦場が空でハンドも枯らしている状況なら、《集中/Concentrate》は2ターンの《Time Walk》に等しい影響を与えます。お互いにハンドは潤沢だけれど、マナスクリューに苦しんでいる状況なら、《耕作/Cultivate》は実質《Time Walk》のようなものです。お互いにクリーチャーを展開し、ノーガードで殴り合う激しいダメージレースをしている状況なら、《連続突撃/Relentless Assault》は《Time Walk》と遜色ない効果をもたらすでしょう。
また、互いの状況が非対称的であっても、同じような事例は考えられます。
一方が数多くのクリーチャーを展開してガンガン殴っていこうと考えているとき、もう一方が《神の怒り/Wrath of God》を唱えると、クリーチャー・カードを引いてきたターン、それらを戦場に展開するためのターン、それらをアタックさせたいターンなど、いくつものターンがスキップ同然の状況に追い込まれます。このような場合において、《神の怒り/Wrath of God》は何枚分もの《Time Walk》に相当しているでしょう。
逆に、マナ・ディナイアル戦略を取ることで、その《神の怒り/Wrath of God》を唱えられなくすれば、それを引いてきたターンなどはスキップ同然の状態となります。このケースにおいて、当該戦略に関連したカードは全て《Time Walk》と言っても過言ではありません。
このように、ターンが意味する6つの項目のうち、そのゲームの焦点となる要素を見出すことで、「あなたは、このターンに続いて追加の1ターンを行う」とは書いてないカードを、あたかもそのような効果の如く使うことが出来るのです。
これを繰り返していけば、容易く勝利を手にできることは言うまでもありません。
ちなみに、先程のマナ・ディナイアル戦略で《神の怒り/Wrath of God》を封殺されそうなゲームにおいて、対戦相手の《Time Walk》を差し止めるには、どうすれば良いでしょうか?
これまでの連載を踏まえれば簡単ですね。使えるマナに制限を掛けられたなら、軽いカードを唱えて対応すれば良いこと。全体除去での一掃を狙わず、ブロッカーとなるクリーチャーを展開したり、単体除去で丁寧に相手の攻め手を潰すことで、マナ・ディナイアル戦略に関連したカードはデクに成り下がります。
こうなれば、《神の怒り/Wrath of God》を引いてきたターンなどがスキップ同然の状態になったのと同じく、今度は当該戦略に関連したカードを引いてきたターンなどがスキップ同然の状態に追い込まれます。つまり、軽いブロッカーやピン除去が《Time Walk》となったわけです。

 

そこで今回のメインテーマは、ゲームの焦点を見極める方法……と行きたいところですが、実のところ、それについての画一的な手法はありません。
前回の最後で述べたように、コンストラクテッドと異なり、リミテッドで用いられるデッキは採用するカードの一貫性を保ち辛く、同じデッキをプレイしているにも関わらず、ゲーム毎に焦点とすべき項目が変わってしまうのです。
しかし、それでは話が終わってしまうので、せめてゲームの焦点になりやすい項目をデッキ構築の観点から分析してみたいと思います。なぜデッキ構築の観点からなのかと言うと、ゲーム毎に焦点とすべき項目は変わるとしても、リミテッドにおける殆どのデッキが構築段階で想定しているゲームの焦点には一つの傾向を見て取れるからです。具体的に言うと、どのデッキも「すべてのパーマネントを1度だけアンタップする」、および「土地を1枚だけプレイする」の2点をゲームの焦点に置く傾向があります。
こうなる理由は、リミテッドで使われるカード群が、コンストラクテッドで使われるそれらと比べて、ゲームに対する影響力の面で大きく劣るためです。簡単に言ってしまえば、あるマナ域のカードが影響を及ぼす範囲は、あっても1マナ上のコスト帯のカードぐらいまでで、それまでプレイしてきたコストの小さなカードは、より大きなコストのカードをプレイされると、ほとんどの場合で価値を失います。もちろん、コンストラクテッドのデッキに採用されるレベルのカードもあるため、盤面に長いこと影響を与えるカードは存在しますが、それが何枚もデッキに入っていることは稀です。
つまりリミテッドというゲームにおいて、1枚のカードで稼げるターン数は基本的に1~2ターンとなります。そして、コンストラクテッドのように強烈なシナジーを形成するカード群でデッキを固めることも出来ないため、1~2ターンを稼げば勝敗がすぐに決着するということもありません。勝利を掴むためには、ほとんどの場合で同コスト帯のカードとトレードされる、いくつものカードを唱えていき、細かくターンを稼いでいく必要があります。
また、マジックのエキスパンションを構成するカードの大部分がクリーチャー・カードであり、リミテッドがその場でパックを剥いて得たカードでもってプレイする以上、クリーチャーの攻撃によってライフを0点にすることが、ほとんどのデッキの目指す勝利条件となるでしょう。
故に、毎ターン土地をプレイしながら、展開できる最大コストのクリーチャー・カードを唱え、それらのカードが稼ぐ1ターンを積み重ねて勝ちをもぎ取る。これがリミテッドの基本戦略にならざるを得ません。そうなると、構築段階で想定すべきゲームの焦点も、自ずとそれに関連した「すべてのパーマネントを1度だけアンタップする」、および「土地を1枚だけプレイする」の2点に絞られるわけです。

 

では、それを焦点に見定めたとして、どのようにデッキを構築していけば勝ちやすくなるでしょうか?
単純に考えるなら、低いコストのクリーチャー・カードから順に多くの枚数を採用した束と土地を合わせた40枚を作れば良いことになります。
たとえば2マナのクリーチャー・カードは2ターン目にこそ唱えたいのだから、2ターン目までにドローしている必要があるため、それよりコストの大きなカードと比べて多くの枚数を採用したいでしょう。同様に4マナより3マナ、5マナより4マナのカードを多く採用していくと、低いコストのクリーチャー・カードから順に多くの枚数を採用した束が出来上がります。これに土地を加えれば、先に述べた基本戦略を十分に遂行できそうな気がしてきます。

 

 

ええ、気がするだけです。これだけの指針だとデッキになりません。
1つには最大マナ域のカードが不明です。また、採用すべき土地の枚数も分かりません。よって、これらを順に詰めていきましょう。
まず、大きなマナコスト帯のクリーチャー・カードほど採用枚数が少なく、最終的に1枚になるのは良いとして、何マナ域のクリーチャー・カードまで採用するべきでしょうか?
ここで考えるべきは、ライフの初期値が20点というルールです。「ゴブリンの突撃ゲーム」を思い出してみてください。初期ライフは20点という制約があるため、除去にもなるインスタントの《爆発の衝撃/Explosive Impact》は無用の長物で、それに大きく劣る効果の《溶岩の斧/Lava Axe》は勝利に繋がる1枚でした。これと同じようなことが、通常のゲームでも言えます。
一般的に言って、2マナのクリーチャーはパワー2、3マナのクリーチャーはパワー2~3、4マナのクリーチャーはパワー3~4、5マナのクリーチャーはパワー4~5という塩梅でコストの増加に比例してクリーチャーのパワーも上がっていきます。とすれば、各マナ域のクリーチャーについて1ターンを稼ぐ、つまり1回プレイヤーにアタックを通せたとして、6マナのクリーチャーまで数えれば大体20点に到達します。ならば、それより大きなマナコストのカードは無用の長物となりやすいでしょう。
つまり、何も考えずに1枚は採用しても良いと言えるギリギリのラインは6マナ域のクリーチャーまでで、それより大きなコストのクリーチャーは相手の攻撃をキッチリと捌いていけるデッキ、すなわち盤面をガッチガチに固められるコントロールぐらいでしか採用できないと言えます。
また実戦においては、毎ターン土地をプレイできないことも多々あるため、6マナ域のクリーチャーですら採用には慎重な姿勢を取ることが推奨されます。少なくとも、6ターン目に唱えた時だけ強いようなカードは採用を絶対に見送るべきですし、7ターン目以降に唱えて盤面の有利・不利に影響を与えられるカードでも、防御面に難があって相手の攻撃を捌き辛いデッキにおいては採用が躊躇わられます。攻めに比重を置いているため、守りが脆いようなデッキを使っているなら、クリーチャーは5マナ域までを最大とし、対戦相手の防御を突破するトリックなどを採用して、ゲームの早期決着を目指す方が無難でしょう。

 

さて、最大コストが見えてくれば、採用すべき土地の枚数も数理的に見えてきます。
先に答えを言ってしまうと、リミテッドの一般的なデッキが採用すべき土地の枚数は17枚となります。何故この枚数になるかと言えば、7枚キープした後ターンを経る(カードを引く)毎に増えていく土地枚数の期待値が、以下の表のように推移するからです。

土地17枚デッキの期待推移
ドロー枚数 1 2 3 4 5 6
土地枚数 3.40 3.82 4.25 4.68 5.10 5.52

表を見れば分かる通り、4~5枚のカードを引けば大体5マナに到達するので、先攻なら6ターン目、後攻なら5ターン目には5マナのクリーチャー・カードを唱えられるでしょう。
先攻の場合5ターン目に唱えられない点は少し気になるかもしれませんが、表の数字に基づくなら、後攻であっても6ターン目に6マナには到達しないはずであり、そうすると5マナ域は依然として場に展開されているクリーチャーで最大のコスト帯になるため、ほとんど問題はありません。
ただ、もしも5マナ域のカード(もしくは5マナが必要なシステム)を主力として使っていきたいデッキを構築したならば、やはり5ターン目に5枚目の土地をプレイしてこそ勝てる仕上がりとなるはずです。この場合は土地を18枚に増量するのが良いでしょう。
土地枚数の期待値は、以下の表のように推移します。

土地18枚デッキの期待推移
ドロー枚数 1 2 3 4 5 6
土地枚数 3.60 4.05 4.50 4.95 5.40 5.85

さらに言えば、6マナ以上のカードをプレイしてこそ勝てる生粋のコントロールデッキを組んだ場合など、土地の枚数を19枚にすることも100%あり得ない選択ではありません。

土地19枚デッキの期待推移
ドロー枚数 1 2 3 4 5 6
土地枚数 3.80 4.28 4.75 5.23 5.70 6.17

逆に、5マナ域のクリーチャー・カードすら採用せず、極端に攻撃的な構築をした高速ビートダウンなどでは、土地の枚数が15~16枚になることもあります。

土地15枚デッキの期待推移
ドロー枚数 1 2 3 4 5 6
土地枚数 3.00 3.38 3.75 4.12 4.50 4.88
土地16枚デッキの期待推移
ドロー枚数 1 2 3 4 5 6
土地枚数 3.20 3.60 4.00 4.40 4.80 5.20

このあたりは期待値と採用カードを唱えたいターンなどから最適な枚数を考えましょう。
ただ注意すべきは、たとえば4マナ使える時に唱えられるのは4マナのカード1枚だけでなく、1マナと3マナのカード1枚ずつ、もしくは2マナのカード2枚でもあるということです。2マナ、3マナのクリーチャーを展開した先攻4ターン目に、対戦相手が3マナで展開した盤面唯一のクリーチャーを2マナの除去などにより対処し、さらに2マナのクリーチャーを展開したとしましょう。その瞬間の盤面は圧倒的に有利と言えます。
攻め一辺倒の高速デッキは、このような瞬間的有利を活用して押し切るゲーム展開がほとんどになるため、土地を17枚より切り詰めていく場合は、コンバットトリックや除去などのコストにも気を払い、2つのカードを唱える場合に掛かる合計マナまで土地が伸びるよう配慮すべきです。仮に3マナのクリーチャー・カードが多く、かつ2マナのコンバットトリックや除去を多く採用している場合などは、たとえ攻撃的な構築をしているとしても土地17枚が適正でしょう。
ちなみに、期待値の考え方から、採用すべき各マナ域のクリーチャー・カード枚数も自ずと決まってきます。

2枚採用されたカードの期待推移
ドロー枚数 1 2 3 4 5 6
期待枚数 0.40 0.45 0.50 0.55 0.60 0.65
3枚採用されたカードの期待推移
ドロー枚数 1 2 3 4 5 6
期待枚数 0.60 0.68 0.75 0.82 0.90 0.98
4枚採用されたカードの期待推移
ドロー枚数 1 2 3 4 5 6
期待枚数 0.80 0.90 1.00 1.10 1.20 1.30
5枚採用されたカードの期待推移
ドロー枚数 1 2 3 4 5 6
期待枚数 1.00 1.13 1.25 1.38 1.50 1.63
6枚採用されたカードの期待推移
ドロー枚数 1 2 3 4 5 6
期待枚数 1.20 1.35 1.50 1.65 1.80 1.95
7枚採用されたカードの期待推移
ドロー枚数 1 2 3 4 5 6
期待枚数 1.40 1.58 1.75 1.93 2.10 2.28
8枚採用されたカードの期待推移
ドロー枚数 1 2 3 4 5 6
期待枚数 1.60 1.80 2.00 2.20 2.40 2.60

土地が17枚として、表のとおりに考えると2マナ域以下のクリーチャー・カードは最低でも5枚以上、3マナ域は4~5枚、4マナ域は4枚、5マナ域より上は2~3枚という塩梅になります。
そうすると40枚中の32~34枚超のカードは自動的に定まりますから、残り数枚を好みで埋めれば、「毎ターン土地をプレイしながら、展開できる最大コストのクリーチャー・カードを唱え、それらのカードが稼ぐ1ターンを積み重ねて勝ちをもぎ取るデッキ」は完成します。

 

なお、好みと書いた数枚については、本当に様々な選択肢があるので、最適なものをシチュエーション毎に考え出すしかありません。
単純なところでは唱えれば勝てるようなカード(いわゆるボム)という選択肢があります。また、重いカードと土地やマナ加速のセットという選択肢もあるでしょう。対戦相手の展開するクリーチャーを何でも対処できる除去という選択肢もあります。アタックし続けるためのコンバットトリックという選択肢も悪くありません。土地が伸びなかった場合に備えた軽いマナ域のクリーチャー・カードという選択肢も無難なものでしょう。防御的なデッキで消耗戦を挑みたいならドローソースという選択肢も十分に考えられます。
使用するエキスパンションによっても、正解と言えるような選択肢は変わってくるため、月並みな言い方になりますが、色々と試してみた上で感触の良い選択肢を取るのが良いでしょう。
ちなみに、一般的な傾向だけ述べておくと、軽い確定除去や除去範囲の広い火力は何枚あっても困ることが少ないです。また、攻めに比重をおいたデッキであればあるほど、軽いマナ域のクリーチャー・カードやコンバットトリックが優秀な選択肢となり、逆に防御的なデッキであればあるほど、重いカード、マナソース、ドローソースが優秀な選択肢となります。
他に、どうしても最後の1枚が決まらないといった場合においては、対処が遅れると負けに直結するレアや神話レアをピンポイントに対策したカード、という選択肢がオススメです。
ちなみに、強力なシステムクリーチャーであるとか、2~3マナ域のクリーチャーと遜色ない性能であるとか、余程のことがない限り1マナ域のクリーチャーは採用しない方が無難と言えます。ほとんどの1マナ域のクリーチャーは1/1であるため、他のマナ域のクリーチャーどれでも1体で簡単に沈黙するからです。その割に、攻撃を通しても相手のライフが全く削れず、ほとんど展開するリターンはありません。対戦相手のデッキが2マナ2/1をひたすら並べてくるのに、自分のデッキは2~3マナ域のクリーチャーが少ないなど、本当に特殊な事情がない限り、ただの1マナ1/1を採用するのは止めましょう。

 

さて、このあたりで今回の話をまとめます。
リミテッドにおけるデッキ構築で指針となるのは――

 

毎ターン土地をプレイしながら、展開できる最大コストのクリーチャー・カードを唱える

 

ことです。そして、その実現に向けて各種カードの採用枚数を期待値から検討すると、基本的に土地は17枚、2マナ域以下のクリーチャー・カードは最低でも5枚以上、3マナ域は4~5枚、4マナ域は4枚、5マナ域より上は2~3枚の計32~34枚超が定まります。これに数枚のカードを好みで足した40枚が、正に勝利を見込めるデッキなのです。
逆に言えば、リミテッドはドラフトでもシールドでも、まずこの32~34枚超を確保しなければ始まりません。
既にプールの確定したシールドなら、単に該当する色の組み合わせを探し出すだけとなりますが、プールを作っていくドラフトでこれを実現するにはどうすれば良いでしょう?
鍵を握るのは自分がピックするつもりの1枚を除いた残りカードの束にあります。

 

次回、絶対無二のドラフトの巻。
素敵なひとときを、ご一緒しましょう。